【桜花賞】レッツゴードンキの厩務員が元騎手の件まとめ

 牝馬クラシック第1冠・桜花賞は、レッツゴードンキが鮮やかに逃げ切り優勝。表彰式では、殊勲の岩田康誠騎手をはじめ、関係者の笑顔があふれた。

 テレビ中継でも放送されたこのシーン。皆さんはお気付きであっただろうか?式のなかで、飛びっきりの笑顔を見せていたのが、JRA史上6人目の女性騎手・西原玲奈であったことを-。男社会が根強い日本の競馬界。G1という大舞台で、調教助手として結果を出した彼女の活躍は注目されるべきだ。

 後日。早速、梅田厩舎へ。デビュー時と見た目は変わらない彼女も、既に33歳になったとか。レッツゴードンキとともに戦った桜花賞を、彼女の目線で振り返ってもらった。

 -桜花賞優勝おめでとうございます。表彰式での笑顔が印象的でした。

 「騎手の頃は重賞ですら縁がなかったし、ましてG1なんて関わることすらなかった。夢のようでしたね。興奮し過ぎたようで、周りの方からは“お前、めっちゃテレビに映ってたぞ”ってからかわれました(笑い)」

 -レースはどちらでご覧になっていたのですか。

 「競馬場2階の厩務員控え室で見ていました。結果的には圧勝でしたが、ウチの厩舎はこれまでG1で2、3着ばかり。残り50メートルぐらいまではヒヤヒヤしていました。心の中で“どれも来んといて~”って叫んでいましたね(笑い)」

 -正直、逃げるとは思っていませんでした。ああいう競馬は想像されていましたか。

 「いいえ。まずハナに立ったときに“やっちゃった”と思いました。逃げて失速したチューリップ賞(3着)のあとは、意識的に馬の後ろで我慢させる調教を課してきましたからね。戦前には2、3頭が前に行くという話も聞いていたし、恐らく4、5番手につける(圧倒的1番人気の)ルージュバックの真後ろぐらいの位置だと思っていましたから」

 -それでも、見事に押し切りましたね。

 「前半3ハロンの通過が37秒1。同じ逃げでも、前回(35秒9)とはちょっと違うなと感じました。馬もハナに立つまでは少しハミをかんでいたけど、4角ではリラックスしていましたからね。さすが岩田さん。あの判断は正解でしたね」

 表彰式で胸を張った彼女だが、ここまでの道のりは決して平たんではなかった。10年2月に、10年に及んだ騎手生活にピリオド。JRA通算590戦17勝(ほか地方で7勝)の成績を上げたが、後半はなかなか騎乗馬に恵まれなかった。

 -騎手時代を振り返って。

 「自分の技術不足もありますが、最後の数年は調教要員のような感じで…。チャンスをもらえず、頑張り方もよく分からず、もがいていましたね。自分で一生懸命、調教をつけた馬でも、競馬は別の騎手に。騎手として、開催日は競馬場にいたかったけど…ひとりトレセンに残って切ない思いをしていました」

 -やはり、女性が騎手として成功するのは難しいですか。

 「男女問わず、腕はあるのにチャンスをもらえていない騎手はたくさんいます。活躍するには、人を蹴落としてでも…と思えるぐらいの気持ちの強さが必要でしょうね。ですから、腕があって、本人にやる気があれば女性でも十分やれると思います。あとはJRAが(女性騎手が活躍している)地方競馬のように、女性騎手をみんなで育てる環境をつくってほしい。私は後輩に道をつくってあげられなかった。ぜひ、そうなってほしいですね」

 -引退後は梅田厩舎の調教助手に転身。5年がたちましたね。

 「裏方の仕事ですけど、騎手のとき以上にチャンスをもらえる。レッツゴードンキやショウナンマイティのような馬に関わらせてもらえること自体がありがたい。すごくやり甲斐があるし、楽しいです。先生は仕事で失敗をしても、何も言わずに見守ってくれる。信頼されている分、私も一生懸命考えるし、スタッフと相談しながら、みんなで頑張って馬をつくっていく。そこに喜びがありますね。騎手時代とは違って、今はひとつのところに落ち着いて安心できる。競馬の仕事に携われるだけでも幸せなのに、信頼できる人の下で働けるなんてなかなかできませんからね。梅田厩舎に来て本当に良かったと思っています」

 レッツゴードンキの次戦はオークス(24日・東京)に決定。今春はまだまだ気が抜けない日々が続く。

 -改めて、レッツゴードンキはどんな存在ですか。

 「桜花賞は出走馬のなかで一番スムーズに走れていました。能力が拮抗している状態を勝ち抜くには、実力のほかにも何か必要なものがあると思います。ドンキには“全てがかみ合えばG1に手が届く”ということを教えてもらいました。その点、ショウナンマイティはG1が遠くて…。たとえG1を勝てる力があっても、結果を出さなければ評価してもらえません。何とか1つ、彼にもG1を獲らせてあげたいです」

 -桜花賞から距離が一気に800メートル延びます。2冠へ向けての意気込みを。

 「桜花賞でも、ペースを落としてリラックスして走っていたし、レースのあともケロッとしているほど心臓の強い馬。母は短距離馬でしたが、キングカメハメハ産駒で母の父はマーベラスサンデー。血統的にも克服は可能だと思います。3冠の可能性があるのはこの馬だけ。何とか、いい状態で本番へ持っていきたいですね」。

 豪州で非業の死を遂げたアドマイヤラクティの悲運を乗り越え、スタッフ一丸となって桜花賞を手にした梅田厩舎。自分の居場所を見つけ、“仕上げ人”として欠かせない存在となった調教助手・西原玲奈が、ドンキとともに2冠達成を目指す。(デイリースポーツ・松浦孝司)

 

桜花賞を勝利したレッツゴードンキ

2015年桜花賞結果

 
1着 6番レッツゴードンキ
2着 7番クルミナル
3着 1番コンテッサトゥーレ
 
 
ツイッターでも話題に…!!
 
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